舞台があって家族の生活がスタートするのではなく、夫婦の生活があってこそ、そこに家族の舞台が生まれるのだ。
家族の舞台はリビングの広さに限定されることもなければ、形にも左右されない。
当然のことだが床や壁の仕上げや家目一ハにも左右されない。
あの原始社会のたて穴式住居の生活や、キャンプ場のテントの外の生活を考えてみよう。
あの屋外生活が基本的なリビングの原形といえる。
この基本は今も昔も変わらない。
ならば原点を見出してみるとよい。
それが即家族の原点であり、住まいの原点となる。
現代社会では、あまりにも付加されたモノが多い生活のために、家族はおろか夫婦までも基本が忘れられようとしている。
その基本こそ夫婦が創るべきものなのだ。
リビングに各自専用コーナーを要は二人が一緒になって何を創ろうとするかだ。
確かに一緒にいれば子供は産まれる。
しかしそんなことなら、他の動物でも同じことをやっている。
やがて産まれてくる子供のためにも、創造的な夫婦になっているか、住まいが創造をかきたてるスペースになっているかが大切なのだ。
これは二人でつくるしかない。
その意味で若い夫婦の家づくりは大切だ。
しかも自分たちだけの力でつくることが望ましい。
施工は無理としても、せめて設計だけは自分たちでやる。
ともかく、まず基本的な生活の場を考えることだ。
何度も言うように、よぶんに付加されたモノは一切忘れ、床・壁・天井だけあればよい。
下手にシステムキチンやソファーセット、あるいは照明器貝などに臼を奪われると原点からはずれてしまう。
新築が無理ならリフォームでもよい。
いったん今の住まいを丸裸にして改めて間取りをつくる。
住まい全体が無理ならリビングルームだけでもよい。
極力夫婦だけの生活スペースに改造しようとするのだ。
アパートでも同上しだ。
するとどうだろう。
住まいのリフォームと思っていたことが、結局は夫婦のリフォーム、いや夫婦の再生になっていることに気がつかれることだろう。
おのずと家族も再生される。
まさにリフォームならず、「リ・ホーム」となる。
夫婦のインテリア効果インテリアとはむずかしいことではない。
何もないただの四角い室内に、一枚の絵を壁に掛けるだけで、がらっと部屋の雰囲気は変わる。
ほとんど白とグレーだけのモノトーンの殺風景な室内が、ベルナール・カトランの明るい花のリトグラフや、ジャン・ピエール・カシニョールの女性像のリトグラフによって、一転するものなのである。
絵の持つ不思議な世界が四角い室内に広がり、作家の息づかいまでもが聞こえてきそうだ。
できれば部屋に掛ける絵は、夫婦二人で選んだ方がよい。
本格的な油絵でなくてもいい。
有名画家の作品である必要はない。
水彩画でもリトグラフでも本物、そうオリジナルが良い。
季節感があって、何かの記念日などに買い求めたものが望ましい。
この一枚の絵は、部屋の空間がシンプルで、すっきりしていればいるほどに、迫力をもってその世界が拡大する。
まさに絵のインテリア効果といえよう。
そういう絵を年々増やし、季節ごと、あるいは月ごとに交換してみるといい。
室内に時節が生まれ、夫婦の会話が自然に生まれる。
絵に限ったことではない。
窓辺のカーテンでも、二人のインテリアは花開くのだ。
実は筆者は、インテリアの好きな〝インテリアおばさん″たちに、時々意地悪な質問をすることがある。
「季節ごとにカーテンを替えていますか」イエスという答えは誰からも返ってはこない。
なるほど一般にいうインテリア、家具や調度には凝っているものの、季節ごとにカーテンを替えるような演出までには至っていないのである。
インテリアには、効果的な演出やイベント性が必要なのだ。
夫の誕生日に特製カーテンを吊るせば、もう二人の間はバンバンザイ、というものである。
夫婦のためのインテリアには、子供たちは参入できない。
いてもよいが、彼らは脇役にすぎないのだ。
あくまでも夫婦が主役でそれを学習することに意味がある。
ある日、それも大きな記念日、そう三十歳あるいは四十歳の誕生日や結婚十周年、二十周年などの記念すべき日には、ちょっとぜいたくかなと思うくらいの高価なイスをプレゼントする。
ふだん坐るのがためらわれるくらいの本革張りのイス、こういうものをさりげなく食卓に置く。
王座とまではいかないが、家長の象徴であり、これこそ侵されざる夫の席となる。
そしてまた、なんとこのイスが大変なインテリア効果を生み、室内をピシッとしめてくれる。
妻も四十代の坂をのぼりだすと、だんだんとヒマもできてくる。
この際、働きに出てもいいし、家で何かを始めてもよい。
例の本格的な機織り機など、実用を抜きにしても大変な存在感がある。
インテリア用品としたら最高にセンスの良いものとなる。
欧米の家庭を訪ねると、リビングの壁にびっしりと額に入った写真が飾ってあるのをよく見る。
子供たちや祖父母のものもあるが、よく見ると圧倒的に夫婦のものが多い。
こういうのが、わが国の夫婦にはほとんど真似できないところだ。
アルバムを見せるのが精一杯である。
勇気をもって欧米夫婦を見習ってみる。
するとどうだろう、夫婦は今まで以上に一体となり、その結束を見て子供たちも安らぐのである。
インテリアも、リフォームももっと夫婦を中心にして考えてみてはどうだろう。
あたたかい家族関係を築くには住まいのプランは親を中心に実際の家づくりのテーマはいったい何だろうか。
これを要約して「子供を育てること」「子供と団らんすること」、そして「子供夫婦と二世岸で住むこと」というのは少々意外だろうか。
家づくりのテーマに子供が大きく取りあげられることは多い。
親にとって子供の成長ほどうれしいものはない。
子供を持つ親の最大関心事と言えば、子供であるといっても不思議はない。
しかし、ここで問題なのは住まいにとっても家族にとっても、子供が一番大切なのかということだ。
さらに親が子に向ける関心が子供にとって良いことなのかということだ。
まずその前に、住まいは誰のものかということをはっきりさせよう。
当然のことだが住まいを建てたり、買う夫婦のものだ。
たとえ子供が三人いようが、年頃の日うるさい子供だろうが、断じて彼らのものではない。
この点をはっきりさせておきたい。
さらに家族は当然一人ひとり大切ではあるが、夫と妻が中心でなりたっている。
家族の大黒柱の主張は何よりも大切にされなければならない。
この点もしっかり肝に命じておいてほしい。
こんなきまりきったことをなぜ念を押すかというと、家づくりのテーマがどうしても子供中心になってしまうからである。
親の生活や人生、夫婦の趣味などはそっちのけなのだ。
当の子供たちにとって、この親が自分に向ける関心は、まったく反対の二つの意味で受け取られている。
その一つが「迷惑」である。
親にとってはあっと声を上げるほどガッカリさせられることなのだ。
しかもこの「迷惑」は「反発」として態度や姿勢にあらわれる。
そしてもう一つが「甘え」である。
人は人から関心を得たいために努力することもある。
その点親は最も近いところにいる人だ。
努力せずに人から関心を得られることに慣れてしまうと、いつかそれは「甘え」に変ってしまう。
この「迷惑」と「甘え」が時として同時に爆発することがある。
勉強だ、やれおけいこだと言う親に、反発がエスカレートし、登校拒否だとか、家庭内暴力などと、どうしようもない甘えを親にぶつけるようになる。
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